SSDを換装して高速化したいけれど、クローン作業の失敗やデータ消失が不安で踏み切れない方は多いでしょう。
Acronis True ImageでのSSDクローンは対応OSやUEFI設定、パーティションの扱いなどでつまずきやすく、起動しないトラブルも起きます。
本稿では事前チェック、クローン作成、トラブル対処、移行後の最適化までを実践的に解説します。
必要機材や接続方法、ブータブルメディア作成、クローン方式の選び方などを手順に沿って示します。
本文では失敗しやすいポイントにフォーカスしたトラブルシューティングも詳述します。
まずはクローン前の準備項目を確認して、安全に作業を進めましょう。
Acronis True ImageでSSDクローンする手順と注意点

Acronis True Imageを使ってSSDへクローンする際の基本的な注意点と準備事項をまとめます。
これから紹介する内容を順に確認すれば、トラブルを減らして安全に移行できます。
必要な機材
クローン作業で最低限必要な機材を揃えておくことが重要です。
機材 | 用途 |
---|---|
ターゲットSSD | クローン先の記憶装置 |
外付けケースまたはSATA-USBアダプタ | ノートPCや空きドライブ無し環境での接続 |
ブータブルUSBメモリ | Acronisの起動メディア作成 |
作業用ドライバー類 | 筐体開封や取り付け |
バックアップ用外付けHDD | 万が一に備えたデータ保存 |
対応OSとエディション
Acronis True ImageはWindowsとmacOSで提供されています、バージョンによって機能差がある点に注意してください。
Windowsでは一般的にWindows 10以降が推奨されますが、詳細は公式の動作環境を確認してください。
商用版やサブスクリプション版ではクローン機能やブータブルメディア作成がサポートされる場合があり、無償の機能制限もあるため購入前に確認してください。
ソースディスクのチェック項目
クローン元となるディスクの健全性を事前にチェックすることは最重要です。
まずファイルシステムのエラーを修復し、ディスクの不良セクタがないかを確認してください。
Windows環境ならchkdsk、macOSならディスクユーティリティを使って検査と修復を行ってください。
システムディスクの場合は不要なファイルや一時ファイルを削除して、クローン時間を短縮することをおすすめします。
ターゲットSSDの互換性
ターゲットSSDが使用するコネクタやフォームファクタに対応しているか、事前に確認してください。
SATA、M.2、NVMeなどのインターフェイス違いにより接続方法が異なります、対応アダプタが必要になる場合があります。
また、古いマザーボードではNVMeをブートデバイスとして認識できないことがあり、BIOSの対応状況をメーカーサイトで確認することを推奨します。
容量とパーティションの注意点
ターゲットSSDの容量はソースディスクの使用済み容量以上である必要があります、単純に総容量が小さいとクローンできません。
容量が同等か若干大きい場合はパーティションのリサイズが必要になることがあるため、どのパーティションを拡張するか計画しておいてください。
また、MBRとGPTの違いによりパーティション構成や起動方式に影響が出るため、事前に確認しておくと後のトラブルを避けられます。
UEFIとセキュアブートの確認
UEFIブートとレガシーBIOSブートではクローン後の起動設定が変わります、現在の環境を把握してください。
セキュアブートが有効な場合は、クローン後に署名されていないブートローダーが拒否されることがあるため無効化する必要が出る場合があります。
ブートモードを切り替えるとOSの起動に影響することがあるため、設定変更は慎重に行ってください。
事前バックアップ
クローン作業を始める前に必ず重要データのバックアップを取ってください。
Acronisの機能に頼らず、別メディアへコピーしておくことで万が一の際にも復旧が容易になります。
以下は推奨する最低限のバックアップ項目です。
- 個人データフォルダのコピー
- 重要なアプリケーション設定のエクスポート
- システムイメージの作成
クローン前の準備

SSDへクローンを行う前に、作業の流れとリスクを整理しておくことが重要です。
ここでの準備不足が後のトラブルにつながるため、慌てずに一つずつ確認してください。
データバックアップ
まず最優先でユーザーデータと重要な設定のバックアップを作成してください。
OSのシステムイメージだけでなく、ドキュメントや写真、メールデータも個別に保護することをおすすめします。
外付けHDDやNAS、クラウドストレージなど、必ず別メディアへ二重に保存しておくと安全度が上がります。
バックアップ後は復元テストを行い、実際にファイルが開けるかを確認してください。
Acronis True Image自体でバックアップ機能があるため、クローン前にイメージを取る用途でも活用できます。
SSDの接続方法
ターゲットSSDの接続方法は複数ありますので、用途に応じて最適な手段を選んでください。
- SATAを内部直結
- M.2スロットに直接装着
- M.2 to USBアダプタを使用
- SATA-USB変換アダプタを使用
- 外付けエンクロージャに収納
デスクトップで内部に直結できる場合は、安定した接続と転送速度が得られるため優先してください。
ラップトップや検証用なら、USB接続のアダプタやエンクロージャが手軽です。
接続時はPCの電源を切り、静電気に注意して作業してください。
クローン先と元を取り違えないよう、ケーブルやドライブ名をラベルで明示すると安全です。
SSDファームウェア更新
ターゲットとなるSSDが供給元のファームウェア更新を要しているかを確認してください。
最新のファームウェアは互換性や性能の改善、バグ修正を含む場合があります。
更新作業はリスクを伴うため、必ず事前にバックアップを取ってから行ってください。
更新中に電源が途切れるとSSDが起動不能になる可能性があるので、ノートPCではACアダプタに接続するなど電源を確保してください。
ベンダー提供の公式ツールを使用し、手順書に従って慎重にアップデートを実行してください。
ディスク健康状態の確認
クローン元のディスクが健全であることを確認してから実行してください。
不良セクタやSMARTの警告はクローンに失敗する原因となります。
チェック項目 | 推奨ツール |
---|---|
SMARTステータス 不良セクタの有無 温度 |
CrystalDiskInfo smartctl ベンダー診断ツール |
ファイルシステムの整合性 不良クラスタの検出 |
chkdsk fsck |
ディスクベンチマーク 転送性能 |
CrystalDiskMark ATTO |
SMARTで再割り当て済みセクタ数や代替保留中セクタがある場合は、クローンを避けるべきか検討してください。
chkdskやベンダーツールでエラーが見つかったら、可能なら修復を行い、それでも改善しない場合は交換を検討してください。
検査結果は画面キャプチャやログで保存しておくと、後でトラブル対応する際に役立ちます。
クローン作成の詳細手順

Acronis True Imageを使ってSSDへクローンする際の具体的な手順を、実機でそのまま使えるように詳しく解説します。
インストールから実行、進捗確認までの流れを順番に追えば、失敗を減らせます。
Acronis True Imageのインストール
公式サイトから最新版のAcronis True Imageをダウンロードしてください。
ダウンロードしたインストーラを管理者権限で実行してください。
ライセンスキーを入力してアクティベーションを完了させてください。
インストール中はウイルス対策ソフトを一時停止すると、誤検出による失敗を避けられます。
インストール後は一度ソフトを起動し、更新チェックとデバイスアクセスの許可を済ませておくと安心です。
ブータブルメディア作成
Acronis内蔵のブータブルメディア作成機能を使う方法を推奨します。
理由はドライバや環境依存を最小限に抑えられるためです。
- USBメモリ 8GB以上
- DVD RW
- 外付けHDD
- WinPEベースを選ぶ場合は必要なドライバを追加すること
作成時にWinPEとLinuxベースを選べますが、UEFIや特殊ドライバが必要な環境ではWinPEを選択してください。
作成後は別PCでブート確認を行い、USBから起動できることを確かめてください。
ソースディスク選択
クローン元のディスクはAcronisの画面で間違いなく選択してください。
選ぶ前にBitLockerや暗号化を解除することを推奨します。
事前にchkdskやディスクチェックを実行し、ファイルシステムの不整合を修正してください。
不要な大容量ファイルや一時ファイルは削除し、使用領域を減らしておくとクローン時間が短縮されます。
ディスクがダイナミックやソフトウェアRAIDの場合は、クローン方法が制限されるので注意してください。
以下は選択前にチェックしておきたい項目です。
- ディスク名と容量が一致しているか
- 暗号化やBitLockerが無効化されているか
- システムファイルにエラーがないか
- 重要データのバックアップを取得済みか
ターゲットディスク選択
ターゲットSSDは接続を確認し、初期化が必要ならあらかじめ行ってください。
UEFI環境ならGPTを選び、レガシー環境ならMBRでの初期化を検討してください。
ターゲットディスクを選ぶ際は内容が全て消えることを忘れないでください。
容量がソースより小さいSSDへはクローンできませんので、空き容量の確認を必ず行ってください。
SATAやNVMeなどインターフェースが異なる場合は、ブート順やドライバのチェックもしておくと安全です。
クローン方式の選択
Acronisでは複数のクローン方式が選べますので、目的に合わせて選択してください。
下の表で主な方式と特徴を比較します。
方式 | 特徴 |
---|---|
自動クローン | 簡単で推奨 |
手動クローン | パーティション調整が可能 |
セクターバイセクター | 完全複製向け |
自動クローンは設定が最小限で初心者向きです。
手動クローンではパーティションをリサイズしたり配置を変更したりできます。
セクターバイセクターは破損セクタまで含めてコピーするため、時間が長くなります。
クローン実行と進行確認
クローンを開始する前にすべてのアプリケーションを終了し、電源を確保してください。
ノートPCではACアダプタを接続し、デスクトップでは電源の安定供給を確認してください。
クローン開始後は進行バーとログを定期的に確認してください。
途中でエラーが出た場合はログを保存し、再試行前に原因を調査することを推奨します。
クローン完了後はBIOSまたはUEFIで起動順を変更して、ターゲットSSDから起動するか検証してください。
起動しない場合はブート修復やパーティションフラグの確認を行うと解決することが多いです。
最後にAcronisの検証機能でイメージの整合性チェックを行い、問題がないことを確認してください。
トラブル対処と復旧方法

Acronis True Imageでのクローン作業は便利ですが、思わぬトラブルが発生することがあります。
ここでは代表的な問題と、手早く復旧するための手順を整理してお伝えします。
クローンが途中で停止
クローン処理が途中で止まってしまう原因は多岐にわたります。
まずは基本的なチェックを順番に行うと、原因特定が速くなります。
- 電源供給の不安定さ
- 接続ケーブルの緩みや断線
- ソースディスクの不良セクタ
- ターゲットSSDの容量不足
- ソフトウェアのバグやバージョン不整合
ログやエラーメッセージは最重要の手がかりになりますので、Acronisのログを確認してください。
可能であれば途中で止まった時点のエラーログをスクリーンショットで保存し、原因に応じて対処しましょう。
ターゲットSSDが起動しない
クローン完了後にターゲットSSDから起動できない場合は、まずBIOS/UEFIの起動順序を確認します。
元のディスクが接続されたままだと、そちらが優先されることがありますので、一時的に切り離して試してください。
MBRとGPTの不一致や、ブートローダーの破損で起動しないケースも多いです。
Windowsならブート修復機能を利用し、修復できない場合はコマンドプロンプトからbcdbootやbootrecで修復を試行しましょう。
それでも起動しないときは、クローン方式やパーティションテーブルの見直しを検討してください。
パーティションサイズの不整合
クローン先のSSDが小さい、あるいは大きい場合にパーティションサイズが合わないことがあります。
Acronisには自動的にパーティションを調整するオプションがあるため、事前に設定を確認してください。
手動で調整する場合は、Windowsのディスク管理やGPartedなどを使ってパーティションの縮小や拡張を行います。
重要なのはファイルシステムの整合性を保つことで、操作前に必ずバックアップを取ってください。
セキュアブートによる起動拒否
新しいSSDへクローンしたシステムがセキュアブートで弾かれることがあります。
まずは一時的にセキュアブートを無効化して起動を確認してください。
無効化で正常に起動するなら、ブートローダーの署名やドライバの署名が問題になっている可能性があります。
対応としては、正しい署名済みブートローダーを導入するか、必要に応じて署名されたドライバを導入する方法があります。
作業後はセキュアブートを再有効化し、問題が解決していることを必ず確認しましょう。
ドライバ読み込みエラー
クローン後に特定のドライバが読み込めずエラーが出ることがあります。
特にNVMeやRAIDコントローラのドライバ、チップセット周りで発生しやすいです。
まずはセーフモードで起動し、ドライバのインストールやロールバックを試してください。
以下の表は代表的な問題と対処法の早見表です。
問題 | 対処法 |
---|---|
NVMeコントローラドライバの不足 SATAコントローラの不一致 チップセットドライバが古い |
製造元サイトからドライバを入手 Acronisでのドライバ読み込みオプションを使用 セーフモードでドライバを更新 |
RAIDモードとAHCIの不一致 ドライバ署名エラー |
BIOS設定を確認してモードを合わせる 署名済みドライバを用意してインストール |
解決しない場合は、ドライバを一旦アンインストールしてから最新版を入れ直すと改善することがあります。
代替クローンソフトの利用
Acronisで解決できない場合は、別のクローンソフトを試すのも有効です。
ツールによってはドライバの扱いやブート修復の方法が異なり、別ソフトで正常になることがあります。
- Macrium Reflect
- Clonezilla
- EaseUS Todo Backup
- Samsung Data Migration(メーカー製SSD向け)
代替ツールを使う際も、事前バックアップを取り、試行は慎重に行ってください。
最後に、問題の切り分けを丁寧に行うことで、早期復旧につながります。
移行後の最適化と確認

SSDへクローンした直後には、必ず最適化と各種確認を行ってください。
見落とすとパフォーマンス低下や起動トラブルにつながる可能性があります。
パーティションサイズ調整
クローン後はターゲットSSDの未割り当て領域やパーティションサイズを確認してください。
ソースより大きなSSDに移行した場合、多くは未割り当て領域が残りますので、拡張を行う必要があります。
Windows標準のディスク管理やサードパーティ製のパーティションツールで拡張できますが、必ず重要データのバックアップを取ってから作業してください。
アライメント確認
SSDはパーティションアライメントがずれていると性能が低下しますので、確認は必須です。
アライメントの確認はディスクの開始オフセットを参照する方法が一般的で、64KBや1MB境界で整合しているかを見ます。
ずれている場合は、無料ツールやパーティションソフトで再配置を行うと効果が出ることが多いです。
TRIMの有効化
TRIMはSSDの寿命と速度維持に重要な機能ですので、有効になっているかを確認してください。
Windowsではコマンドプロンプトから「fsutil behavior query DisableDeleteNotify」で状態確認ができます。
無効になっている場合は、管理者権限で「fsutil behavior set DisableDeleteNotify 0」を実行して有効化してください。
Windows起動と動作確認
ターゲットSSDからの初回起動は必ず行い、ログインや主要アプリの動作を確認してください。
スタートアップ項目の遅延やエラーがないかをチェックし、デバイスマネージャーで未認識のデバイスがないかも見てください。
もしブルースクリーンや起動エラーが発生する場合は、セーフモードで起動しドライバの問題を切り分けてください。
ライセンスとアクティベーション確認
OSや主要ソフトウェアのライセンス状態を確認し、移行による認証エラーがないかをチェックしてください。
以下は代表的な確認項目と対応方法の一覧です。
項目 | 確認内容 | 対応方法 |
---|---|---|
Windowsライセンス | ライセンス認証済み | オンライン再認証 |
Office製品 | サインイン状態 | サインアウトと再サインイン |
クリティカルソフト | アクティベーションキー | 製品キー再入力 |
問題がある場合は製品サポートやベンダーのサポートページを参照し、手順に従ってライセンスを復旧してください。
旧ディスクの処理方法
旧ディスクをそのまま保管するか、データを消去して再利用するかを決めてください。
- そのままバックアップ用に保管
- 完全消去してデータ抹消
- フォーマットしてストレージとして再利用
- 物理破壊して機密データを確実に廃棄
機密性の高いデータが含まれている場合は、確実な消去や物理破壊を検討してください。
再利用する場合は、ファームウェアや健康状態を再チェックし、パーティションを最適化してから運用に戻してください。
移行後の保守チェックリスト

移行直後から運用に入るまでの必須確認項目をわかりやすく整理します。
短期的な起動確認から長期的なメンテナンス計画まで、優先度を意識して実施してください。
- OS起動とユーザーログインの確認
- デバイスマネージャーで未認識デバイスやドライバの確認
- TRIMの有効化状態の確認とベンチマークによる速度チェック
- パーティションサイズとアライメントの最終確認
- セキュリティソフトやライセンス認証の再確認
- バックアップ設定の再構築とスケジュール確認
- 旧ディスクのデータ消去方法の検討と処分手順の確定
- 定期的なファームウェアおよびOSアップデートの運用体制構築